Shopifyコレクションが多ソース対応——バリアント&ネストも可能に
2026年7月16日、Shopifyのコレクション機能に大型アップデートが入りました。これまでコレクションは「自動(smart collection)か手動(custom collection)か、どちらか一方」を選ぶ排他的な仕組みでしたが、今回のアップデートで1つのコレクションの中に複数の「ソース(商品の供給元)」を混在させられるようになりました。さらに、商品単位だけでなくバリアント単位でコレクションを組めるようになり、コレクションの中に別のコレクションを入れる(ネストする)こともできます。
「コレクション制御のためだけのタグ」を大量に運用してきたストアほど恩恵が大きいアップデートです。この記事では、公式チェンジログとヘルプドキュメントをもとに、何ができるようになったのか・設計時に効いてくる上限や注意点を具体的に解説してみたいと思います。
従来モデルの制約:自動か手動かの二者択一
従来のコレクションは、作成時に2択でした。
- 自動コレクション(smart collection):「タグが organic」「価格が5,000円以下」などの条件にマッチした商品が自動で入る。ただし、条件に合わない商品を後から手動で1個だけ足すことはできない
- 手動コレクション(custom collection):商品を1つずつ手作業で選ぶ。条件による自動追加は使えない
そのため実務では「基本は自動条件で回したいが、条件に合わない商品を数点だけ足したい/外したい」というニーズに応えられず、コレクション制御専用のタグを商品に付けて条件側を無理やり合わせる、という運用回避が定番でした。今回のアップデートは、まさにこの制約を解消するものです。
新モデル:4種類のソースを1つのコレクションに混在できる
新モデルでは、1つのコレクションに以下4種類のソースを同時に追加できます。まず、新しいコレクション追加画面を見てみましょう。右側のパネルが「ソース」で、下の「+」枠から2つ目以降のソースを追加していく構成です。
新しいコレクション追加画面。右側が「ソース」パネルで、点線の「+」から複数のソースを追加できる
| ソース | 内容 |
|---|---|
| Products(商品) | 自動条件 または 手動選択で「商品」を追加 |
| Variants(バリエーション) | 自動条件 または 手動選択で「バリアント」を追加 |
| Collection(コレクション) | 既存の別コレクションを丸ごとソースとして追加(=ネストコレクション) |
| App(アプリ) | アプリが提供する商品セットを追加 |
ソースの種類はプルダウンで切り替える。「商品・バリエーション・コレクション・アプリ」の4択
さらに各ソースは Include(含める)だけでなく Exclude(除外する)としても使えます。除外条件は常に包含条件より優先されます。複数のソースで同じ商品が重複してヒットしても、コレクション内では1回だけ表示されます。
公式ヘルプの例を借りると、「オーガニックコーヒー」コレクションに「タグ organic かつ $50以下」という条件セットと、「素材がセラミック かつ $30以上」という独立した別の条件セットを並べる、といったことが1コレクション内で完結します。従来これを実現するには、条件を無理に1セットに押し込むか、コレクションを分けるしかありませんでした。
実務での典型形:「特集ページ = 既存カテゴリの寄せ集め(Collectionソース)+ 目玉商品を手動追加(Productsソース)+ 在庫僅少品を除外(Exclude)」が、タグ運用なしで1つのコレクションとして組めます。
バリアント対応コレクション:「ブルーのアイテムだけ」の特集が正しく作れる
今回のもう1つの目玉が、Variants ソースです。「ブルーのバリアントだけを集めた色別コレクション」のように、商品全体ではなく特定バリアントだけを、条件または手動選択でコレクションに入れられます。
- バリアントで絞ったコレクションでは、ストアフロントの絞り込みフィルター(価格帯・色見本など)もそのバリアント群を基準に表示される。「ブルーの商品コレクション」を開いたのに別の色のスウォッチが出る、という従来ありがちだった違和感が解消できる
- Online Store や POS など、対応チャネルにそのまま表示される
- コレクションはディスカウントや税設定などのワークフローでも再利用できるため、「特定バリアントだけを対象にしたセール」のような設計が、タグ運用なしで組める
混同しやすい罠:「Products ソース」の条件でバリアント属性(在庫数など)を使うと、1つでも合致するバリアントがあれば商品全体がコレクションに入ります。たとえば「在庫 > 0」の条件では、5バリアント中1つだけ在庫ありでも商品ごと表示されます。バリアント単位で絞りたいときは、「Variants ソース」を選ぶのが確実です。
この違いを実際のストアで検証してみました。どちらも条件は同じ「バリエーションの名前 に『ブルー』を含む」ですが、ソースの種類だけを変えています。
まず、ソースを「バリエーション」にした場合。各商品のブルーのバリアントだけがコレクションに入り、カードにも「72 バリエーション中 12」のように対象バリアント数が表示されます。代表画像もブルーのバリアントのものです。
ソース=バリエーション:ブルーのバリアントだけが入り、「72 バリエーション中 12」のように件数が表示される
次に、ソースを「商品」にした場合。ブルーのバリアントを1つでも持つ商品が丸ごと入ります。バリアント数の表記はなくなり、代表画像も商品のメイン画像(ブルー以外の色)になります。最後の「オールドチェア」に至っては、赤い椅子の画像で表示されています。
ソース=商品:同じ条件でも商品全体が入るため、代表画像はブルーとは限らない(オールドチェアは赤い画像)
「ブルー特集」を作ったつもりが赤い椅子が並ぶ——ソースの選択ひとつでストアフロントの見え方がこれだけ変わります。色・サイズ切り口の特集を作るときは、ソースの種類に気をつけたいところです。
ネストコレクション:コレクションの中にコレクションを入れる
ネストコレクション(nested collection)は、「コレクションの中に別のコレクションをソースとして入れる」機能です。公式ヘルプの例では、既存コレクション「Teapots(急須)」「Steepers(茶こし付きポット)」「Infusers(茶こし)」をソースとして、親コレクション「Teaware(茶器)」を作ります。
重要なのは自動同期です。子コレクション(Teapots など)に商品が追加・削除されると、親コレクション(Teaware)の中身も自動で追従します。
作成手順(デスクトップ)は、コレクション編集画面でソースの種類を「Products」から「Collection」に切り替え →「Connect a collection」→ 既存コレクションを選択 → 保存、という流れです。
注意:ネストコレクションは「ストアフロントに階層ナビゲーションが自動生成される」機能ではありません。あくまで商品の集合の包含関係を定義するもので、メニューでの階層表示は従来通りナビゲーション設定側の仕事です。
条件(conditions)もアップデート:メタフィールドやカテゴリで絞れる
自動条件は1コレクションあたり最大60個。属性としてタイトル・タイプ・ベンダー・タグ・価格・在庫などの従来項目に加え、以下が使えます。
- 商品カテゴリー:Shopify標準の商品分類(Standard Product Taxonomy)で絞り込み。サブカテゴリーを含めるかどうかも選択可
- メタフィールド:特定メタフィールドの値で絞り込み(条件に使えるメタフィールド定義は最大128個まで有効化可能)
- メタオブジェクト参照:参照型メタフィールドの参照先で絞り込み
- 商品ステータス:active・draft・archived で絞り込み
メタフィールドが条件に出てこないときは:メタフィールドはデフォルトでは条件のプルダウンに表示されません。設定 → カスタムデータ → 商品(またはバリエーション)→ 対象のメタフィールド定義で「コレクションの条件」を有効化すると選べるようになります。実際に有効化して試したところ、メタオブジェクトを参照するメタフィールドも条件に指定できました。なお、有効化できる定義は商品・バリアントそれぞれ最大128個まで、値で絞り込めるタイプは真偽値・整数・小数・評価・1行テキストの5種類です。
メタフィールド定義の「オプション」で「コレクションの条件として使用する」を有効化すると、条件のプルダウンに表示される
タグに依存していたコレクション条件を、構造化されたメタフィールドやカテゴリ基準に置き換えられるということです。AIエージェントが商品データを読むエージェントコマース時代に向けたカテゴリ・メタフィールド整備と、コレクション運用の簡素化を一石二鳥で進められます。
細かい仕様の注意点も押さえておきましょう。
- 除外条件に使える属性はカテゴリー・タグ・タイプ・ベンダーのみ(価格などでは除外できない)
- タグの特殊文字は同一視される(
red-newとred_newは同じ扱い) - 比較価格(compare-at price)の「$0.00」は「未設定」ではなく「値あり」と判定される
- 「以上/以下」の演算子はないため、「$150以下」は「$150.01 未満」のように端数をずらして表現する
- バリアントタイトルを条件に使う場合の書式は「青 / L」のようにスラッシュ前後に半角スペースが必須
コレクション作成時の上限一覧
新機能にはストア単位の上限が設定されています。特にネストと除外はタイトなので、設計前に必ず確認するようにしましょう。
| 項目 | 上限 |
|---|---|
| 他コレクションを含む(ネストする)コレクション | ストアあたり 50個 |
| 他コレクションを除外に使うコレクション | ストアあたり 5個 |
| バリアント(手動・自動問わず)を含むコレクション | ストアあたり 100個 |
| 自動条件を持つコレクション総数 | 5,000個 |
| 1コレクションあたりの条件数 | 60個 |
| 同一ソース内での「個別商品の除外」と「コレクション除外」の併用 | 不可 |
ネスト上限50・除外上限5という数字を見ると、「全カテゴリを親子ツリー化する」ような設計には向かなそうです。要所(大分類ページやセール母集団の管理など)に絞って使うのが現実的と言えそうです。
ロールアウト状況と互換性
新コレクションモデルは段階的ロールアウト中です。公式ヘルプには従来の smart / manual コレクションのページが「Legacy」として残されており、「新モデルが管理画面で利用可能になるまでは、従来のコレクションを使い続けられる」と明記されています。つまり、まだ新モデルが来ていないストアが存在します。
- 見分け方:コレクション編集画面に「ソース」の概念(Products / Variants / Collection / App の切り替え)があれば新モデル
- 既存コレクションは自動移行され、削除や再作成は不要
- コレクション機能自体は Basic プラン以上で利用可能(Starter プランは非対応)
開発者向けの注意もあります。サードパーティアプリやカスタム連携でコレクションを操作している場合、Admin API version 2026-07 への更新が必要です。従来の smart / custom という二分法を前提にした実装(ルールセットの有無でコレクション種別を判定するロジックなど)は、マルチソース化により前提が崩れます。連携アプリを使っているストアでは、挙動を一度確認しておくと安心です。
まとめ:何から手を付けるか
- ストアが新モデル済みか確認する:コレクション編集画面でソース切り替えの有無をチェック
- タグ運用の棚卸し:「コレクション制御のためだけのタグ」は、条件+手動追加+除外の組み合わせで置き換えられないか検討する
- 条件のメタフィールド化:タグ条件をカテゴリ・メタフィールド条件に置き換え、エージェントコマース対応のデータ整備と同時に進める
- バリアント特集の企画:色・サイズ切り口の特集(「ブルーのアイテム特集」など)をフィルター表示まで含めて正しく作れるようになった。CVR改善施策の新しい選択肢になる
- 連携アプリの確認:コレクションを読み書きするアプリが API 2026-07 に対応しているか確認する
「自動か手動か」の二者択一に縛られてきたコレクション運用が、ソースの組み合わせで柔軟に設計できるようになりました。まずは自ストアのロールアウト状況を確認しつつ、タグだらけになったコレクション条件の整理から始めてみてはいかがでしょうか。