Shopify Editions Spring ’26 オンライン(全25項目)
「オンライン」は、あなたのオンラインストアそのものに関わるアップデート集です。接客・検索・テーマ編集・お客様アカウント・海外販売(マーケット)・B2B(企業間取引)・Shopify Collective(ストア間の仕入れ)まで、全25項目と幅広いのが特徴です。全体を貫くのは ①AIが店を賢くする ②世界中・どんな相手にも売りやすくする という2つの流れです。本記事では25項目を6つのテーマに整理し、出典つきで一つずつ解説してみました。
#01 AI販売スタッフ(Shopify Inbox) 近日公開・要アップグレード チャット接客のShopify Inboxに、24時間自動で接客・商品提案するAIエージェントが登場。 +
Shopify Inbox は、ストアフロントのチャット(お客様からの問い合わせ)を扱う無料のメッセージング機能です。今回のアップデートで、ここに AI販売スタッフ(AIエージェント) が載りました。公式の説明を読むと、人間スタッフに代わって24時間・自動で接客と商品提案を行うチャットボット、という位置づけのようです。

出典ページには、おおむね次のことができると書かれています。
- 商品の発見・おすすめ、問い合わせ対応、カタログに基づく回答、ポリシーに沿った案内
- 必要に応じて人間スタッフへ会話を引き継ぐ(管理画面には「商品やポリシーを把握し、ブランドボイスを学習して、必要に応じてスタッフに会話を引き継ぎます」とありました)
固定のボットではなく、トーン・スタイル・ルールを設定でき、個々のチャットを評価するほど応答が改善する、と案内されています(“the more you rate, the sharper it gets”)。実際に運用するなら、置いて終わりではなく、トーン設定とチャット評価で育てていく類の機能だろうと感じます。
出典を読み込んでいて肝だと感じたのが、お客様が「Shop」でサインインしているときの挙動です。英語版の出典には、買い手がShopでサインインすると preferences and purchase history from across Shopify(=Shopify全体にまたがる好みと購入履歴)を使って返信をパーソナライズできる、と書かれていました(私の意訳ではなく、英語原文のままの記載です)。つまり参照される履歴は自店だけでなく Shopify 全体(Shopアカウントに紐づく横断データ)のようで、これが正しければ自店では初めてのお客様にも、Shop上の嗜好を踏まえた接客ができることになります。エージェンティック群で出てきた buyer-linked token(Shopの“身元”)を、今度は接客チャット側で使う構図と読めます。
Shopサインインの仕組みを整理すると(「Googleでログイン」に近い)
身元は Shopify 全体で1つですが、調べた範囲では各店で一度「続行」を押す同意(オプトイン)が要るようです。① 自店が「Sign in with Shop」を有効化し、② そのお客様が自店でサインインして初めて横断データが使える、という二段構え。他店でサインイン済みでも自店に自動ログインはされませんが、再来訪客は SMS確認コードやパスキーでワンタップで済むとのこと。だとすると、成果は結局「いかにお客様に自店で Shop サインインしてもらうか」に懸かってきそうです。
同じShopify製AIでも、Sidekick とは向き先が逆だと整理すると分かりやすいと感じました。
| AI | 向き | 誰のためのAI |
|---|---|---|
| Sidekick | 管理画面(裏側) | マーチャントの運営補助 |
| AI販売スタッフ(Inbox) | ストアフロント(表側) | 来店客の接客・推薦 |
対応言語は、Editionsノートでは「19言語」とされ、出典の現行リストを数えると英・日・中(簡/繁)・韓・タイ・ベトナム・仏・独・伊・西など20言語超ありました。数は時期で変わりうるので、「だいたい20言語前後」と捉えておくのが無難だと思います。
検証ストアの「Shopify Inbox > 概要」を開いてみると、「ストアに AI販売スタッフを配置」には 〈近日公開〉バッジが付いていて、トグル「エージェントを有効化」は無効、⚠️「この機能を使用するには、お客様アカウントをアップグレードしてください」という警告が出ていました。AIのパーソナライズが「Shopでサインインした顧客の履歴」に依存する以上、新しいお客様アカウント(Shopサインイン対応/後述 #13)への切り替えが前提になっているようです。
提供条件に注意:私たちが使っている検証ストアでは、現時点(2026-06)ではまだ使えませんでした。〈近日公開〉に加え、お客様アカウントの新方式へのアップグレードが要るためです。アップグレード自体は先に済ませておけますが、「近日公開」が解けるまではAIスタッフ自体は動かない、という状態でした。なお「AIの回答の正確性は保証されない/顧客データの扱いはプライバシーポリシーを確認」という注意書きも添えられていました。
無料機能の範囲で多言語の一次接客を任せられそうなのは、人手の限られる小規模店や越境ECにとって現実的な選択肢に見えます。ただ調べていて強く感じたのは、効き目の源泉がShopの横断データにある以上、Shopサインイン導線(新お客様アカウント)を整えるほど効くという点です。今回の Editions 全体を貫く「Shopサインインの重要性」が、この項目にもはっきり出ていると感じました。導入したら放置せず、トーン/ルール設定とチャット評価で育てる運用が前提になりそうです。
#03 AI搭載のストア分析(SimGym) AIのお客様が代わりにストアを巡回し、買い物体験をスコアで評価してくれる。 +
複数のAIショッパー(AIの買い物客)にストアを巡回させ、購買体験をシミュレーションして、テーマ(ストアの見た目・構成)の良し悪しをスコアやフィードバックで返してくれる公式アプリ、という位置づけのようです。海外の著名なShopify解説者 Kurt Elster 氏は「無料のAI CRO提案ツール」と表現していました(CRO=Conversion Rate Optimization/コンバージョン率最適化)。元の一文に「Liquid必須」とあるのは、Liquidテーマ(通常のオンラインストア)が分析対象で、ヘッドレス等のLiquid外構成は対象外、という意味だと読み取れます。

- AIショッパーがストアを回遊し、テーマ変更の影響をさまざまな角度から検証・比較判定してくれる。
- 当初は2テーマの比較(例:Dawn vs Horizon)が前提でしたが、アップデートで単独テーマ単体の分析もできるようになりました。
- ページ別にフォーカスエリアを指定できます(ホームページ/商品ページ/コレクション/カート)。ページごとの課題を切り分けやすくなります。
- リリース前に、購買体験への影響が「スコア」で見える——これが本質的な変化だと感じます。
2026年3月に正式ローンチされ、アプリ自体は無料、5回のシミュレーションまで無料で試せます(限定公開時は有料だったものが、正式版で無料枠付きになりました)。位置づけとしては Shopify オリジナルの「自動A/Bテスト+購入テスト」に近い、という見方もあります。
私自身、正式ローンチ直後から実際に触り、その記録はX(@sh_sakamoto)にあります。最初は素の状態に近いストアで Dawn 15.2.0 と Horizon 3.4.0 の比較を回しました。
- 正式ローンチ&初トライ(2026-03-12)↗:「AIの買い物客がストアで購買体験をシミュレーションして、テーマごとにフィードバックしてくれる。素の状態に近いストアで Dawn 15.2.0 と Horizon 3.4.0 の比較を回してみた」
- 使ってみた所感=“リリース前の答え合わせ”(2026-03)↗:「リリース前に購買体験への影響がスコアとして見えるのは非常に大きな変化」「今後は構築途中でもシミュレーションを挟み、スコアが落ちていないか随時確認しながら進めるやり方になりそう」。一方で「AIショッパーのシミュレーションなので売上が担保されるわけではない」という留保つきです。
- 単独テーマ分析に対応(2026-03-29)↗:「2つのテーマを比較しなくても単独テーマを分析できるようになった。ホーム/商品/コレクション/カートとページ別にフォーカスエリアを指定してAIのフィードバックがもらえる」
注意:対象は Liquid テーマ(ヘッドレス構成は対象外)です。そして繰り返しになりますが、これはAIショッパーによるシミュレーションであって、実売上を保証するものではありません。スコアはあくまで「購買体験の良し悪しの目安」と捉えるのが適切だと感じます。
実際に使ってみて一番大きいと感じたのは「リリース前の答え合わせ」ができる点です。これまでは「要件定義→設計→構築→公開して実績待ち」で、「作ってみたが売上に効くのか分からない」という不確実性がつきものでした。SimGym を挟むと、構築の途中でスコアを見ながら進められる——途中確認の手間でスケジュールやコストは増えうるものの、公開後の不安は減らせます。とくに当方のHorizon 移行のように「テーマを変えるべきか」を判断する場面では、Dawn と Horizon を並べてスコアで比較できるのは有力な材料になると感じました。
#02 ストアフロント検索の結果を拡充 サイト内検索が誤字や言い回しの違いに強くなり、関連商品を見つけやすく。 +
これは自店サイト(例:store-dojo.com)の検索ボックスが賢くなった、という話です。外部のAIがShopify横断で商品を探す Catalog API とは別レイヤーで、来店客が自店内で検索する体験の改善にあたります。要点は「誤字や"いつもと違う言い回し"でも関連商品が出る」ことで、公式の説明にも search…using typos or unusual phrasing, they'll get relevant results(誤字や普段と違う言い回しで検索しても、関連性の高い結果が返る)とありました。2つのAI挙動の組み合わせで成り立っています。

打ち間違いを、よく似た正しい語へ自動でマッチさせる挙動です。公式には具体的なルールが書かれていました。
- 3〜5文字の語:誤字1つまで許容
- 6文字以上の語:誤字2つまで許容
- ただし最初の4文字が正しいことが条件
語句の関連語・概念・カテゴリ・概念間の関係を踏まえて結果を拡張する挙動です。さらに商品の説明文や画像データ(画像内の文字・色)まで使って精度を上げるとされています。「異なる言い回し」に効くのは主にこちらのようです。
- 条件:ストアの商品数が20万点未満のとき有効。
Search & Discovery アプリで「同義語グループ」を作れば、別の語でも同じ結果に寄せられます。ブランド固有語・略称に有効です。
注意:提供条件には段差があります。AI検索挙動はオンラインストアを持つ全マーチャントにデフォルトで有効ですが、セマンティック検索は商品20万点未満が条件で、大規模カタログは要確認です。高度なカスタマイズ(同義語等)は Search & Discovery アプリに加え、プライバシー設定で Shopify Network Intelligence を有効化する必要があります。言語ごとの対応可否は公式に明記がありませんでした。
補足:精度の源泉は商品説明・画像の質にあります。これは「データ整備がAI時代の効きどころ」という、商品データの構造化(Agentic領域)と同じ論理です。AIに正しく解釈してもらうための土台は、自店検索でも外部AI発見でも共通だと見えます。
個人的に最も効くと感じたのは「検索結果ゼロ」の取りこぼし防止です。サイト内検索をする客は購買意欲が高くCVR(Conversion Rate/購入転換率)も高いので、ここの改善は売上に直結します。加えて手動の同義語メンテ負担が減るのも実務的にありがたい点です(セマンティックがある程度吸収してくれる)。ただしブランド固有語・略称は今も同義語登録が有効で、セマンティックには20万点未満という上限がある点だけは押さえておきたいところです。
#16 Shopify Smart Pricing アプリ AIが商品ごとの「値上げ/値下げ」ヒントを提示。変更は人間が承認する方式。 +
AIが商品レベルの価格ヒント(値下げ・値上げ)を提示する公式アプリです。公式の説明では See product-level tips backed by your sales, inventory, costs, and seasonality(売上・在庫・原価・季節性に裏付けられた商品単位のヒントを確認できる)、AI price tips for markdowns and markups, grounded in your store's data(ストアのデータに基づく、値下げ・値上げのAI価格ヒント)とありました。

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提案のみ・自動変更しない:出典には
Review tips, use your judgment, apply the ones you choose. You're in control.(ヒントを確認し、自分の判断で、選んだものだけ適用する。主導権はあなたにある)とありました。=価格は自動で書き換わらず、採用するかは人間が判断します。 - 無料。20言語以上に対応(日本語を含む)。グローバル提供です。ただしA/Bテスト機能は一部の米国マーチャント限定とされています。
検証ストアにインストールして「概要」画面を確認してみたところ、次のような構成でした。
- 見出しは「滞留在庫を一掃し、売れ筋商品を最適化する」。売れ筋の利益率を守りつつ、どれを値下げすべきかのヒントを出す、という位置づけでした。
- 仕組みは2ステップ:① 機会を確認する(パーソナライズされたAIの値下げヒントを確認)→ ② 価格を更新する(提案価格を選んで適用)。
- 価格のマークダウン(値下げ):売れ行きの遅い商品ごとに「現価格 → 提案価格(値下げ率%)」をリスト表示。確認した画面では複数商品に加え「ほか14件の商品」とあり、下部に 「確認して更新」ボタン(=人が確認して適用)が置かれていました。
- 価格のマークアップ(値上げ):売れ筋の利益率確保用。機会がないときは「今のところマークアップの必要はありません」と表示されていました。
- =マークダウン/マークアップ両方向のヒントを出し、自動適用ではなく「確認して更新」で人が承認する流れでした。
- 設置場所は管理画面サイドバー「アプリ」内(App Storeから無料インストール)。アプリアイコンは紫系でした。
注意:A/Bテスト機能は一部の米国マーチャント限定とされています。日本のストアでは、まずは値下げ・値上げのヒント提示と「確認して更新」での適用が利用範囲と見ておくのが無難です。
無料で値付けの意思決定支援を導入できるのが大きいと感じました。売上・在庫・原価・季節性というデータに基づくため、勘頼みの値付けを補正してくれます。何より自動適用ではない点が安全で、暴走値引きが起きない設計になっています。運用は「ヒントを見て人が決める」フローです。重要度はBですが、値付けに悩む中小ストアには勧めやすい無料ツールで、原価データを入れておくほど精度が上がる想定です。
#04 オンラインストアとチェックアウトのA/Bテスト(Rollouts) 変更を指定日時に公開し、実トラフィックで2案を比較できる。テーマ+チェックアウトに対応。 +
ストアの変更を ①指定日時にスケジュール公開 でき、さらに ②実トラフィックでA/Bテスト(複数バージョンを配信割合を決めて出し、反応を比較)できる機能です。出典には「Rollouts は、ベーシックプラン以上でご利用いただけます」とあり、幅広いプランで使えます。テーマを複製せず、公開済みのテーマで直接カスタマイズを下書きして進めるのが基本の形です。

- 前提:ストアで新しいバージョンの Shopify Markets が有効になっている必要があります。
- スケジュール公開:ベーシックプラン以上。季節の更新・セール・キャンペーンを準備して、指定した日時に公開されるよう予約できます。
- A/Bテスト(実験):Growプラン以上で利用でき、テストグループの割合を調整して複数の変更セットを実トラフィックで比較できます。
実験として実行すると、出典によると次の4指標で比較できます(指標の追加・削除はできません)。
- コンバージョン率(販売につながったセッションの割合)
- 直帰率(1回のページビューで終了したセッションの割合)
- チェックアウト到達率(チェックアウトに到達したセッションの割合)
- カート追加率(カートに追加されたセッションの割合)
- Rollouts では テーマ設定・埋め込みアプリ・Liquid テンプレートは変更できません。実際に試したところ、これらは編集画面上では操作できてしまうものの、ロールアウトの変更内容としては保存されませんでした(公開しても反映されません)。「触れるのに効かない」項目なので、気づかず作業して時間を無駄にしないよう注意が要ります。
- 旧式のテーマには適用できません。カスタマイズは公開済みのテーマでのみ作成できます。
- テーマ変更を伴う未終了の Rollouts があると、新しいテーマを公開する前にアーカイブが必要です。
- アーカイブした Rollouts は、アーカイブ解除も再開もできません。
- Translate & Adapt などの翻訳アプリは、Rollouts のテーマ変更に含まれるテキストの翻訳には対応していません(変更分の訳は別途用意が必要)。
当初はテーマ向けだった Rollouts が、チェックアウト設定・お客様アカウント設定にも広がったことを実際に確認しました(記録は X: @sh_sakamoto 2026-06-07 ↗)。公式ヘルプのテーマ向け Rollouts ページにはまだ反映されていませんが、テーマがセクション単位の変更なのに対し、チェックアウトは設定の下書きを丸ごと切り替える方式で、配信割合と開始・終了日時を指定してテストします。チェックアウトページまで実トラフィックで検証できるのは大きな変化だと感じました。
① 商品ページの画像表示パターンをA/B(2026-04-13) ── 商品詳細ページの画像表示は複数パターンから選べますが、最適解は商材・コンセプトで変わります(高額検討品 vs 消耗品、ブランド訴求 vs 機能/素材訴求)。Rolloutsならコード不要・追加費用なしで実トラフィックA/Bにかけ、お客様の反応で判断できます。該当ポスト ↗
② チェックアウト&お客様アカウントも対応(2026-06-07) ── ロールアウトのアップデートで、チェックアウトとお客様アカウント設定のスケジュール公開&A/Bテストが可能になりました。テーマのようなセクション単位ではなく、チェックアウト設定の下書きを丸ごと切り替える仕組みです。該当ポスト ↗
③ GA4でRollouts A/Bを分析(ユーザープロパティ) ── 標準レポートの4指標に加え、GA4(Google Analytics 4)で深掘りしたいときの手順です。① GA4でカスタム定義(ユーザープロパティ)を追加 → ② テーマファイルに GA4 へユーザープロパティを送るスクリプトを追加し、A/Bテストするテーマごとに値を設定 → ③ DebugView で確認。Google & YouTube アプリで計測しているストア向けには、ダミーイベントを同時発火させるコードを使います。該当ポスト ↗
window.addEventListener('load', function() {
if (window.gtag) {
gtag('set', 'user_properties', { rollout_variant: 'default' /* または 'test' */ });
gtag('event', 'rollout_check', { send_to: 'G-XXXXXXXXX' });
}
});
補足:SimGym(リリース前のAIシミュレーション)と Rollouts は対になる関係です。SimGym=リリース前の予測、Rollouts=リリース後の実測A/B。両者を使い分けると、「出す前に当たりを付け、出した後に実データで確かめる」という流れが組めます。
テーマの見せ方(例:商品画像の表示パターン)に唯一の正解はなく、商材次第で最適が変わります。だからこそ実トラフィックA/Bで決めるのが本筋だと感じています。ベーシックプラン以上で広く使え、中でもチェックアウトまでA/Bできるようになった意義は大きく、CVRの最終関門を実験対象にできるようになりました。計測の深掘りは GA4 連携(ユーザープロパティ)でも可能です。
#08 ローカライズしたテーマのスケジュールとテスト マーケット(地域)別に翻訳したテーマを、実トラフィックでネイティブにA/B比較。 +
この項目は、Rollouts と既存のローカライズ機能を"組み合わせる"使い方の提案です。まったく新しい配管が増えたわけではなく、「こう組み合わせると効く」という実用シナリオの提示と捉えるのが正確だと見ています。

- ① 言語を割り当てる:設定 → 言語 で、各マーケットに言語を割り当てます。
- ② 翻訳する:Translate & Adapt(無料・公式)で翻訳します(自動2言語+手動無制限)。ここで「翻訳(Translate)=言語を変える」と「適応(Adapt)=同一言語でもマーケットごとに表現を変える(US英語 vs UK英語など)」を使い分けます。
- ③ 画像・動画・ロゴをマーケット別に:テーマエディタで、対象を選択 →「…」→ ローカライズ、の手順でロゴまでマーケット別に切り替えられます。
- ④ Rollouts で公開・A/B:出来上がったマーケット別テーマを Rollouts でスケジュール公開/A/Bテストします。
補足:正味の新しさは Rollouts 側にあります。ローカライズ自体は既存機能です。これまでテーマ版を実トラフィックでネイティブにA/Bする手段が無かったため、「どの現地版が刺さるかを実測比較できる」点が新しく見えます。価値の主語はRollouts、ローカライズは題材、という関係です。
注意:新機能として過大に売らないのが誠実だと感じます。実態は「既存ローカライズ+新Rolloutsの合わせ技」です。重要度Aは機構の新規性ではなく、多地域ECで効く実用シナリオとしての高さによるものと理解しています。なお、Rollouts 自体はベーシックプラン以上で使え、A/Bテスト(実験)はGrowプラン以上です。もう一つ重要な点として、Rollouts で加えた変更分のテキストは Translate & Adapt などの翻訳アプリが自動翻訳しません。先に翻訳を済ませてから Rollouts に載せ、Rollouts 上で新たに足したテキストは別途手動で翻訳する、という順序が安全です。
多地域に展開するストアでは、現地ごとに「どの表現・どのビジュアルが刺さるか」を肌感や推測で決めがちです。この組み合わせは、それを実トラフィックで測って決められるようにする点が実務的だと感じました。Translate & Adapt の「Adapt(同一言語でも地域で表現を変える)」が無料で使えるので、英語圏内の出し分けなども含めて検証の幅は広いと見ています。
#06 モバイルでのオンラインストア編集が快適に スマホのShopifyアプリでテーマ編集が一新。プレビュー常時表示+Sidekick内蔵。 +
Shopifyアプリ(スマホ)から、テーマをモバイル最適化UIで編集できる刷新です。従来もアプリでテーマ編集自体は可能でしたが、今回は指操作前提の再設計+プレビュー常時表示+Sidekick内蔵が加わっています。

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プレビューが編集中ずっと画面に残る。出典には
The canvas stays visible while you edit(編集中もキャンバスが見え続ける)とありました。設定はストアを覆わないコンパクトなシートで開きます。 - リアルタイム反映:キャンバス上の任意のセクション/ブロックを直接タップすると設定が開き、変更しながら結果が見えます。入力UIは指操作向けに再設計されています。
- Sidekick がエディタ内蔵:エディタのどこからでも質問・編集依頼ができます。
- レイヤーマップ:ストアの全体構造を一覧でき、セクション/ブロック/テーマ設定/アプリ埋め込みをスクロールせず探せます。要素を選ぶと、その文脈を踏まえた Sidekick 入力がその場に出ます。
検証ストア(Horizonテーマ)のモバイルエディタで「今すぐ購入」ボタンを選択してみたところ、画面下に「ボタン」チップ付きの Sidekick 入力("何でも質問してください…")が表示されました。選択中の要素を文脈として認識したコンテキスト入力になっており、レイヤー/選択連動Sidekickの動きを実機で確認できました。
補足:公式説明の「プレビュー機能」は編集内容をその場で確認できる画面プレビューのことで、機能が試験提供という意味ではありません。Sidekick記事の「あらゆる画面で Sidekick」の検証でも触れたとおり、スマホアプリ上でのテーマ編集・Sidekick連携は実際に動作しており、ちょっとした修正なら問題なく行えました。ただ画面が小さいぶん、込み入った編集やコード系の作業はデスクトップのエディタのほうが快適なので、用途で使い分けるのがよさそうです。
外出先・移動中の"その場直し"が現実的になったのが効くと感じました。リアルタイムプレビュー付きなので「今この崩れだけ直す」が安全にできます。さらにSidekick内蔵=モバイルで自然言語のテーマ編集ができるため、スキル障壁が下がり、マーチャント自身による軽微な更新を促せます。込み入った編集やコード系の作業はデスクトップのほうが向きますが、「外出先で気づいた小さな崩れをその場で直す」といった用途には十分実用的だと感じました。
#17 ノートパソコンでの編集体験の向上 狭い画面でも、ページ構造と設定パネルを隠さず同時に表示できるように。 +
テーマエディタ/チェックアウトエディタの編集UIが、ノートPCなど横幅の狭い画面でもプレビューを広く保てるよう改善されました。2026-03-25のテーマエディタのナビ再設計の一環で、狭い画面での編集効率を上げることが狙いとされています。

- 従来は左にセクション一覧・右に設定パネルと左右に分かれ、狭い画面では中央のプレビューが窮屈になりがちでした。
- 改善後は、選択中の設定パネルがセクション一覧と同じ左側にまとまり、その分プレビューを広く使えるようになりました(実際にノートPCの画面で確認)。
- モバイル編集の刷新と対をなす「エディタの操作性改善」群の一つという位置づけです。
補足:単体での訴求力は弱いものの、モバイル編集の刷新(#06)と合わせて「エディタ全体が使いやすくなった」という文脈でまとめると価値が伝わります。「外でも(モバイル)、ノートPCでも、編集環境が底上げされた」という一連の流れの一部です。
制作・運用の作業効率を地味に底上げする改善だと感じました。ノートPCで作業する制作者には確実に効きます。重要度はBで、記事では深掘りよりも「作業環境の改善」として軽く触れる程度で十分だと見ています。
#09 マーケット別のディスカウント Basic以上+新Markets 割引を「日本だけ」「米国と台湾だけ」のように、特定マーケットに限定適用。 +
割引を特定の「マーケット」だけに適用できる機能です。出典には、コード型・自動型のどちらの割引も1つ以上のマーケットに割り当て可能と書かれていました。マーケット(Markets)は、Shopify が国・地域などの単位で販売条件をまとめて管理する枠組みのことです。

狙い撃ちできる対象は、出典の説明では次の3種のマーケットのようです。
- 地域(Region)マーケット=国・地域単位(例:米国だけ10%OFF)
- 店舗ロケーション(Retail location)マーケット=POS実店舗単位(例:渋谷店だけのセール)
- B2B(会社ロケーション)マーケット=特定取引先企業だけ
2026春で追加されたUIとして、公式の説明では次の3点が挙げられていました。割引詳細ページの「対象(eligibility/適用条件)」セレクタで割引を1つ以上のマーケットに割り当て、割引一覧にマーケット・顧客フィルタが付き、マーケット詳細ページではそのマーケットに割り当てられた全割引を確認できる、というものです。
設定の流れは、出典によると 割引詳細 → 対象(eligibility)→ Markets から適用したいマーケットを選んで追加する、というシンプルなものでした。
実際にこの機能を触ったときの記録です(X: @sh_sakamoto ↗)。1つの自動割引を『日本・アメリカ・台湾だけ』のように出し分けでき、マーケット詳細画面から、どの割引が適用されるかを公開前にプレビューできるので、ディスカウント設定をいちいち確認しに行かなくて済みます。これまではマーケット別に割引を出し分けるには割引を別々に作るかアプリ側で吸収するケースが多かったところ、マーケットがディスカウントの正式な対象軸になったことで、グローバル展開ストアほど運用の見通しが立てやすくなりました。
注意:提供条件は、出典によると Basicプラン以上 + 新しいMarketsを使用 しているマーチャント全員が対象です。さらに B2Bでカタログ価格の上にさらに割引を出す場合は、Shopifyサポートに連絡して有効化してもらう必要があると明記されていました。
補足:マーケットグラフ・バリエーションレベルの公開・ローカライズ系(Rollouts/ABテスト)と並ぶ「地域別の出し分けツール群」の一角という位置づけです。多マーケット店ほど効きます。なお私のX投稿では、同日リリースのバリアントごとの表示・非表示(#07)はまだ有効化されていなかったとも観察されており、同日リリースでも機能ごとに展開タイミングが違う点がうかがえます。
これまで「割引を別々に作る」か「アプリで吸収する」しかなかった地域別・店舗別・取引先別のプロモを、1つの割引で出し分けられるようになったのは大きいと感じました。越境・多店舗・B2Bのキャンペーン設計がぐっと柔軟になりますし、マーケット詳細画面で公開前にプレビューできるのも運用上ありがたいポイントに見えます。提案の際は、B2Bの上乗せ割引がサポート有効化前提である点と、Basic以上&新Markets前提である点だけは先に確認しておきたいところです。
#11 商品のコンプライアンス開示 法令で必要な警告・開示(成分・ハザード等)を一元管理し、各チャネルへ横断表示。 +
商品に法令で必要な警告・開示を、Shopifyの仕組みで表示・管理できる機能です。出典では、カリフォルニア州 Prop 65(プロポジション65/発がん・生殖毒性に関する警告制度)のがん警告、小部品の窒息ハザード警告、年齢制限・安全警告などが例として挙げられていました。

表示先はマルチチャネルです。出典には "Disclosures can be viewed by customers on your online store, in Shop, on custom storefronts, and through third-party sales channels."(開示はオンラインストア・Shop・カスタムストアフロント・サードパーティ販売チャネルでお客様が閲覧できる)とありました。具体的には次の通りです。
- オンラインストアの商品ページ・カートページ
- Shopアプリ/Shop web(iOS/Android v2.239.0以降)
- カスタムストアフロント
- API経由で外部販売チャネル・アプリ(=AIチャネルにも開示を渡せる)
「ストア・AIチャネル・Shopアプリ」を横断して同じ開示を出せるのがポイントで、エージェンティックコマース(AIが商品を案内して購入まで支援する取引形態)でAIが商品を案内するときも法令警告が伴う、という設計に見えます。
設定はメタオブジェクト方式です。出典によると、Disclosures メタオブジェクトにエントリを作り(タイトル・本文・警告シンボル・Jurisdictions(対象の国/地域) などの編集可能フィールドを持つ)、商品の Disclosures メタフィールドからそのエントリを参照し、テーマに接続して商品ページに表示する、という流れでした。1つの開示タイプを複数商品に再利用でき、CSVインポート/一括編集で複数商品にまとめて設定し、商品一覧を開示タイプでフィルタすることも可能とされています。
検証ストアで実際の見え方を確認してみたところ、以下のようになっていました。日本語UIでは「開示情報」と表示され、英語の "Disclosures" で探すと見つかりませんでした。場所は 「商品のメタフィールド」セクションの中 の中に、淡色のタグのように展開される「+ 開示情報」があります。他のメタフィールド行と見た目が違い、かなり埋もれやすい印象でした。押すと Disclosures メタフィールド行が表示され、入力欄をクリックすると Shopify標準の開示テンプレートが選べました。
- Chemical exposures(化学物質暴露=Prop65系:がん・生殖毒性)
- Choking hazards(窒息ハザード=子供向け)
- カスタム開示事項(自由記述)/新しいエントリーを追加
つまりメタオブジェクトもテンプレートもShopify標準で提供されており、自作は不要でした。ただしストアに表示するにはテーマ側でブロック/セクションの追加が必須です。Horizon では Disclosures テーマブロック、Dawn 等の OS 2.0 テーマでは Disclosures セクションを使う形になります。
注意:対応リージョン/規制の網羅リストは公式に明記されていません。Jurisdictions(対象地域)は自分で定義します。出典には "You're responsible for confirming their suitability for your products and business."(あなたの商品・事業に適しているかを確認する責任はあなたにある)とあり、法令適合の最終責任はマーチャント側です。不安があれば専門家への相談が前提になります。
補足:構成は「メタオブジェクト+メタフィールド+テーマ接続」なので、制作で実装支援しやすい機能です。特にテーマ側の表示組み込みが価値になります。またAIチャネルにもAPIで開示が伝わる点は、エージェンティックコマース時代の法令対応の土台として重要です。
越境ECや規制品(化粧品・サプリ・電子機器・玩具など)を扱うストアでは、ほぼ必須級の機能だと感じました。Prop65や窒息警告などを仕組みで管理でき、手作業の貼り込みや抜け漏れを防げます。重要度Aとした理由もここで、規制対応は事故が起きたときのダメージが大きいので、規制品を扱うマーチャントには優先的に提案したいところです。一方で、UIでは「開示情報」ボタンが埋もれていて見つけにくく、表示にはテーマ側の組み込みも要る——この「気づきにくさ」こそ支援の価値になると見ています。ただし適合判断はあくまで顧客(マーチャント)責任である点は、必ず添えて伝えるべきだと思いました。
#10 Shopify Marketsでの販売チャネル管理(チャネルマーケット) 連携チャネル×地域ごとに、出品する商品・価格・通貨を出し分け。 +
Markets の枠組みに「チャネル」という軸が加わり、連携した販売チャネル × 地域(国)の交差点ごとに、カタログ(出品可否+価格)と通貨を出し分けできるようになりました。Editions の一文にある「連携チャネルごとに出品状況・価格設定・通貨をカスタマイズ」は、このカタログ(出品+価格)+通貨にきれいに対応します。以下は検証ストアで実機検証した内容を含みます。

検証ストアで設定場所を確認してみたところ、マーケット → 「マーケットを作成」 → 「条件を追加する」 と進むと、ダイアログ「マーケットの条件」の種別タブに 「地域(すべて)/会社のロケーション(B2B)/チャネル」 の3つが並んでいました。「チャネル」を選ぶと接続済みチャネルが一覧で出てきて、検証ストアでは12件(Facebook & Instagram/Google & YouTube/TikTok/Pinterest/Rakuten Ichiba (JP)/Appify(モバイルアプリ)/Inbox/会員プログラム・POS系/Shopify GraphiQL App など)が確認できました。対象は3パーツ=①特定/すべて ②チャネル種別 ③地域(国)で構成され、チャネルを選んだうえで地域(国)を指定する形でした。
設定できるノブ(調整つまみ)は、チャネルでは2つだけです。
- カタログ=出品可否+価格の二役(どの商品/バリエーションを含めるか+そのプライスリスト)
- 通貨(例:米ドル・動的FX=為替レートで自動換算)
テーマ・ドメイン・チェックアウトの設定はありません。これらはチャネル側のプラットフォームが持つためです。出し分けの実例として、米国向けFB&IGと日本向けFB&IGを分けるなら、チャネルマーケットを2つ作ります。
| マーケット | 対象 | カタログ | 通貨 |
|---|---|---|---|
| Facebook & Instagram:アメリカ合衆国 | FB&IG 内 アメリカ合衆国 | アメリカ向け | 米ドル(動的FX) |
| Facebook & Instagram:日本 | FB&IG 内 日本 | 日本向け | 日本円 |
これで、同じFB&IGでも国ごとに出品商品・価格・通貨を変えられます。
注意(ここが一番の誤解ポイント):見た目(ラベル)と実体(継承)が逆向きです。ラベル/対象は「Facebook & Instagram 内 アメリカ合衆国」で、チャネルの中に国があるように読め、チャネルが上位に見えます。ところが検証ストアで実際に作成してみると、親マーケット=「アメリカ」(地域マーケット)になりました。つまり国(地域)が親、チャネルマーケットが子で、継承の向きは「国 → チャネル」です。チャネルマーケットは地域マーケットのカタログ・通貨をベースとして継承し、そのチャネル経由のときだけ一部を上書きしているだけでした。
正しい捉え方を言葉にすると、こうなります。
- 国(地域マーケット)=「この国のお客様は、基本こう」 ← ベース
- └ チャネルマーケット=「…かつ、このチャネル経由なら、ここだけ変える」 ← 差分・上書き
主語は「お客様が誰か(=国)」で、そこに「どこ経由で来たか(=チャネル)」で微調整を重ねるイメージです。先ほどの例も「米国の人がFB&IG経由で来たら、米国カタログを土台に、通貨だけ動的FXにする」と読みます。「チャネルが国より上位」ではなく、Shopifyの命名(チャネル:国)が上下を錯覚させているだけで、実体は「国がベース、チャネルは局所的な上書きレイヤー」です。階層イメージにすると ストアのデフォルト → アメリカ(地域マーケット・ベース) → Facebook & Instagram:アメリカ合衆国(チャネルマーケット・上書き) という入れ子です。設計意図としては、地域(国)が体験のベースとして強い軸で、チャネルはそのベースへの例外・上書きなので、「国を親、チャネルを子」にするのが設定重複を避けるうえで合理的、ということだと理解しました。
補足:集客型と注文型で価格の制約が違います。集客型(Google & YouTube/Meta)はお客様が自店サイトに遷移して購入するため、価格は自店オンラインストアと一致が原則です。検証ストアでも FB&IG×アメリカ の継承カタログ行に⚠️警告(!)が出ました(価格一致などを確認せよ、というサインと推測されます)。一方注文型(TikTok/Temu/楽天 等)はプラットフォーム内で完結するため、カタログ・通貨・価格の自由度が高くなります。なお、エージェンティックストアフロント(Catalog API系)はこの仕組みの対象外で、別系統です。
Markets が「地域・店舗(B2B)・チャネル」へ広がり、マルチチャネル販売の出し分けを一元管理できるようになったのは素直に便利だと感じました。マーケットグラフ・バリエーション公開・マーケット別ディスカウントと並ぶ「出し分けツール群」の一角です。ただし最大の山場は「チャネル:国」のラベルが上位に見えるのに、実体は国が親・チャネルが上書きという継承の向きで、ここを図解できるかどうかで記事の価値が変わると思います。あわせて、集客型は価格一致の制約・注文型は自由という差と、カタログが出品可否+価格の二役である点も、読者がよく混乱するので必ず添えたいところです。
#05 マーケットグラフの視覚化 複雑なMarkets設定の全体像を、1枚の関係図で俯瞰できる。 +
Shopify Markets(多国・多通貨・多言語販売の機能)の設定全体を、1枚の図(グラフ)で俯瞰できるビューです。出典の定義は "a visual map of your entire markets configuration"(マーケット構成全体の視覚的なマップ)でした。

前提として、Shopify Markets では国・地域ごとに「マーケット」を作り、価格・通貨・言語・カタログ・割引・税などを設定します。親マーケット → サブマーケットの階層があり、サブは親の設定を継承します。マーケットが増えるほど「どこで何がどう設定されているか」が複雑化する——それを解きほぐすのがこのグラフ、という位置づけのようです。
出典によると、グラフが見せるものは次の通りです。
- 各マーケットをノードで表示。ノードに マーケット名・商品画像・商品数・割引数。
- ノード間の線が親→サブ関係を示し、設定が親からどう継承されているか辿れる。
- 各ノードを展開すると:国/地域(国旗)/ローカライズ(ドメイン・言語・テーマ)/商品・カタログ(通貨)/割引(種類・適用範囲)/事業体(business entity)/チェックアウト設定/税・関税。
- 継承か個別設定かが分かる:サブが親のデフォルトを使う場合、サブと親の両方の設定がハイライトされる。
確認場所(アクセス手順)は、出典によると 管理画面 → 設定(Settings)→ マーケット(Markets)→ 「グラフビュー(Graph view)」 をクリックです。マーケットページ上でリストビュー⇄グラフビューを切り替えられ、特定のマーケットは検索アイコンでマーケット名検索できます。モバイル対応の明記はなく、PC管理画面を想定していると見られます。
解決する課題としては、従来は各マーケットのページを1つずつ開いて継承関係を頭の中で組み立てる必要があったところを、グラフで一望でき、設定ミスや継承の取り違えを防げる、と説明されていました。
注意:提供条件について、出典ページには対応プランの明記はありません(Shopify Markets の一機能という位置づけ)。
補足:監査・引き継ぎ・オンボーディングに有効です。ストア全体のマーケット構成を一枚で把握できるので、支援初期の現状把握が速くなります。
越境・多地域EC(複数マーケット運用)のストアほど効くビューだと感じました。「なぜこの国でこの価格/割引/カタログなのか」の調査が一目で辿れるのは、支援の現場でとても助かります。重要度はB寄り——劇的な変化ではなく、単一マーケット中心の店には影響が薄いですが、多マーケット店の運用品質を上げる「地味だが効く改善」に見えます。特に、引き継ぎやオンボーディング初期の現状把握スピードが上がるのは実務的な価値が大きいと思いました。
#07 商品のバリエーションレベルでの公開 公開の単位が「商品」から「バリエーション(SKU)」へ。色・サイズ単位で出し分け。 +
従来「どのチャネル/マーケットに出すか」は商品単位でしか決められませんでしたが、バリエーション(SKU=在庫管理単位)単位で「このチャネル・このマーケットに出す/出さない」を制御できるようになりました。Editions の一文「チャネル・マーケットごとに公開するバリエーションを管理」がこれにあたります。

設定できる場所は、出典では3か所とされており、検証ストアでも確認できました。
- 商品詳細のバリエーション一覧(PC/モバイル)
- 個別バリアント詳細ページ(モバイル)
- 一括編集ツール(複数商品まとめて)
検証ストアで画面の読み方を確認してみたところ、一覧の「公開」列には各バリエーション(色)グループに2つのアイコンがあり、チャネル数とマーケット/カタログ数を示していました(例:チャネル4・カタログ0)。バリアント詳細では ベージュ/s が「すべてのチャネル」+「なし」(全チャネル公開・マーケットカタログ指定なし)と表示され、一覧の数字と同じ情報の単体表示になっていました。
注意(最重要ルール):出典には "both the parent product and the variant must be published to that channel or catalog"(親商品とバリエーションの両方が、そのチャネルまたはカタログに公開されていなければならない)とあります。つまり親商品とバリエーションの両方の公開が必要なAND条件です。商品自体が未公開のチャネルでは、バリアント設定に関係なく全バリエーションが非表示になりますし、あるチャネルで全バリエーションを非公開にすると、親商品ごとそのチャネルから消えます(1つ再公開するまで)。
制限・注意点も出典に明記されていました。POS(実店舗レジ)では非対応、バリアント単位での公開予約日(未来日時)は設定不可、未公開バリアントにはカスタムカタログ価格が適用されない、の3点です。
補足(提供状況):私のX投稿(@sh_sakamoto)では、同日リリースの「マーケット別ディスカウント」は有効化されていたものの、バリアントごとの表示・非表示はまだ有効化されないストアもありました。同日発表でも機能ごとに段階展開のタイミングが異なるようです(一方、別の検証ストアでは商品詳細のバリエーション一覧+バリアント詳細で公開設定が確認できており、展開状況にはストア差があります)。実際に使う際は「順次展開/自分のストアで要確認」と捉えるのが安全です。
色・サイズ単位での出し分けができるようになったので、マーケット限定色・チャネル限定SKU・B2B限定バリアントといったきめ細かい品揃え設計が組めるようになったと感じました。越境・多マーケット運用(マーケットグラフ)との相性もよく、マーケットごとに見せるバリエーションを変えられます。ただ最大の落とし穴は親×バリアントのAND条件で、「出したのに表示されない」というトラブルは、たいていこの二重公開条件の見落としだと思います。トラブルシュートの定番として、まずここを疑うようにしたいところです。
#12 複数の商品ディスカウントの併用 同一商品はPlus+API 同じ商品に複数の商品割引を重ねがけ可能に(例:ロイヤルティ+季節割引)。 +
ここは誤解しやすいので、最初に整理します。「複数の商品割引を重ねる」と一口に言っても2種類あり、使える範囲が違います。出典(割引の組み合わせ)にもこの2つは別物として書かれていました。

| 重ねかた | 例 | 使えるプラン |
|---|---|---|
| 別々の商品にそれぞれ商品割引 | 商品Aに10%OFF・商品Bに送料無料 等 | 全プラン(従来から可) |
| 同じ商品(同一カートライン)に商品割引を複数 | 商品Aにロイヤルティ割引+季節割引 | Shopify Plus 限定(今回の新機能) |
出典にも 「ストアが Shopify Plus プランをご利用の場合、複数の商品ディスカウントを同じ項目に組み合わせるように設定できます。たとえば、同じ商品にロイヤルティディスカウントと季節のディスカウントの両方を適用できます」 と明記されており、この新機能は Shopify Plus 限定で確定です。つまり、今回できるようになったのは上の表の下段——「同じ1つの商品に、商品割引を2つ以上のせる」ことで、従来はできず、今回 Plus 向けに解禁されました。Editions の一文「同じ商品に複数のディスカウントを適用」は、この下段を指しています。上段(別々の商品に複数の割引)は以前から全プランでできるので、混同しないのがポイントです。
出典には、ディスカウントの組み合わせには次の6種類があると書かれています。このうち6番目が、今回あらたに Shopify Plus 向けに解禁された組み合わせです。
- 注文ディスカウントと無料配送ディスカウント
- 商品ディスカウントと無料配送ディスカウント
- 別々のアイテムに適用される複数の商品ディスカウント
- 商品ディスカウントと注文ディスカウント(対象のマーチャントのみ利用可能)
- 複数の注文ディスカウント(対象のマーチャントのみ利用可能)
- 同じアイテムに適用される複数の商品ディスカウント(Shopify Plus のみ)← 今回解禁された組み合わせ
6番目(同じアイテムに複数の商品ディスカウント)を使えるようにする手順は、出典に次のように書かれています。管理画面だけでは完結せず、APIでの設定が必要です。
- 前提:Shopify Plus プランであること。
- 組み合わせたい各ディスカウントに、管理画面でタグを追加する。
-
GraphQL Admin API のディスカウント用ミューテーションで、
productDiscountsWithTagsOnSameCartLineフィールドに「どのタグ付きディスカウントを同一カートライン上で組み合わせるか」を設定する。
なお 1〜5 の一般的な組み合わせは、割引編集画面の「組み合わせ」セクションで、組み合わせ可能なディスカウントクラスを選んで保存するだけで設定できます(APIは不要)。
Shopify Plus のサンドボックスで実際に検証しました。loyalty(10%オフ)と seasonal(¥1,000オフ)という2つの商品ディスカウントコードを用意し、どちらもアクティブにしておきます。

この2つに、上の手順で双方向タグマッチを設定しました(API で loyalty に許可相手 seasonal、seasonal に許可相手 loyalty を追加)。すると、同じ商品(Poncho ¥5,000)に両方のコードを入れたとき、LOYALTY(−¥500=10%)と SEASONAL(−¥1,000)が同一カートラインで重なり、¥3,500(合計値引き ¥1,500)になりました。設定前は片方しか乗らなかったので、双方向タグマッチが効いているのがはっきり分かります。

管理画面でのタグ付けだけでは重ならず、productDiscountsWithTagsOnSameCartLine を API で設定して初めて重ねがけが効く、という点も実機で確認できました。
注意:背景には Shopify Scripts の廃止(2026-06-30 サンセット)への移行支援があります(Scripts で組んでいた重ねがけロジックを正式な仕組みへ移すため)。また 2026-04 時点で、併用する片方が DiscountCodeApp(Function連動のコード割引)だと同一ライン上でスタックしないという報告があります。
- 適用順:①商品割引 → ②注文割引(商品割引適用後の小計に対して)→ ③配送割引。
- 上限:有効な自動割引はストアあたり最大25件、1注文で商品・注文の割引コードが最大5+配送コード1。
- 割合(%)の注文割引を複数重ねる場合、両方とも元の小計に対して計算されます(累乗ではなく加算)。
-
Checkout Extensibility(拡張可能なチェックアウト)が前提で、
checkout.liquidのカスタマイズとは併用できません。
効くのは Plus の大型販促運用で、しかも API 設定が要るので、提案先は Plus かつ開発リソースのあるストアに絞られます。ロイヤルティ×季節のような同一商品への重ねがけが正式にできるのは魅力ですが、タグ設計を誤ると意図しない値引きになるので、適用順序と上限の理解はセットで必要だと感じました。中小ストアにとっては「別々の商品への割引や、商品+送料無料などは今までどおり全プランでできる」という整理を伝えるのが、いちばん混乱を避けられると思います。
#13 お客様アカウントの刷新(デザイン一新) アカウント画面が見やすく。初回客にはおすすめ商品、ブランドに合うログイン画面に。 +
お客様アカウント(顧客がログインして注文履歴などを見る画面)のデザインが刷新された機能です。Changelogの説明では、直感的なメニュー、ブランドに合わせたログイン画面、初回客向けのおすすめ表示が柱になっているようです。出典には2026年6月17日から段階的に展開され、「最新版のお客様アカウント」を全ストアに数週かけて提供する、と書かれていました。

出典に挙げられていた変更点を整理すると、次のとおりです。
- モバイルのメニュー:4リンクまではハンバーガーメニューに隠さず、ページ上部にインライン表示。
- 注文詳細:モバイルで注文サマリーを折りたたまずインライン表示にして見やすく。
- 注文アクション:注文一覧・注文ステータス画面に、より多くの操作を露出。
- 初回客の体験:注文ゼロの顧客に、空っぽの状態ではなくキュレートしたおすすめ商品を表示。
- ブランドログイン:サインインページでロゴ・色・セクションスタイル・独自のブランド画像をカスタマイズして強化。
注意:出典には、レガシー版(新しい注文ステータスページを持つ旧来版)にも一部は適用されるものの、フルの刷新を受けるには「最新版のお客様アカウント」へのアップグレードが必要とありました。AI販売スタッフなどと同じく、「新お客様アカウント」への移行が前提になります。
補足:これは Shop サインインを軸とする一連の刷新の一部です。AI販売スタッフや buyer-linked token(バイヤーに紐づくトークン)とも地続きで、いずれも「新お客様アカウント」への移行が下敷きになっています。
ログイン後体験のUXを底上げする更新だと感じました。特に、初回客に空状態ではなくおすすめ商品を見せる点はCVR(コンバージョン率)や回遊に効きそうですし、ブランドログインでログイン画面まで世界観を統一できるのはブランド体験の一貫性として価値があると見えます。重要度Aとして、新お客様アカウントへの移行を提案するフックになりそうです。
#15 365日間のログインセッション維持 ログイン状態を最長365日保持。再訪のたびのログインの手間を削減。 +
お客様アカウントのログイン状態を最長365日保持する機能です。元の説明では、ログイン状態を最長365日保ち、再訪問をスムーズにする、とされています。新しいお客様アカウントは OAuth 2.0/PKCE という標準的な認証方式(Google や Apple も使う仕組み)を採用しているとされ、再訪のたびにログインし直す手間が減り、購入・再訪の摩擦を下げる狙いのようです。

- 従来より長いセッション維持により、再訪したらそのままログイン済みの状態を作りやすくなります。
- Shop サインイン/新お客様アカウントの体験改善の一部で、お客様アカウント刷新(#13)と同じ系統の更新です。
注意:詳細な発動条件や、端末・ブラウザをまたいだときの挙動については、公式は基本ページの記載にとどまっており、細則は要確認です。
補足:おすすめ表示やAI販売スタッフといったパーソナライズ機能は「ログイン済み」であることが前提です。長期セッションは、これらの効果を底上げする土台になります。サインイン時にマーケティング同意を取れる導線とも相性が良く、リスト構築にもつながります。
再訪時のログイン摩擦を削るので、リピート購入やLTV(顧客生涯価値)の改善に地味に効くと感じました。単体のインパクトは小さい重要度Bですが、お客様アカウント強化の一連の流れの一部として押さえておきたい更新だと見ています。
#14 IDプロバイダーからお客様データを同期 Plus専用 外部IdPでのログイン時に、プロフィール・タグをShopifyへ自動同期。 +
外部のIdP(Identity Provider/認証基盤)でログインしたとき、その顧客のプロフィールやタグを Shopify のお客様アカウントへ自動同期する機能です。IdPとは、Auth0・Ping・Azure AD(現 Entra ID)などの、ログイン認証を一手に担う基盤を指します。元の説明では、これらのIdPからプロフィール・タグを同期する(Shopify Plus)、とされています。

公式によると、同期される項目は次のとおりです。
- メール(既存アカウントとの突合キー)
- 氏名(姓名セット)
- 電話
- 住所(番地・市・州・郵便・国。複数可)
- タグ(グループ単位で取り込み)
仕組みはクレームマッピングです。サインイン時にIdPからデータを同期し、既存データの扱いは上書きルールで制御するとされています。
- 既存を保持:空のフィールドだけをIdPの値で補完します。
- 既存を置換:フィールド群を上書きします(ただしIdPが送ってこない項目は除く)。
技術設定としては ID token claim import(shopify.dev に載っているトークン構造・クレームマッピング)で行うようです。
注意:利用にはShopify Plusに加えて、接続済みのサードパーティIdPと、お客様アカウント機能が必要です。ヘッドレスや新お客様アカウントが必須かどうかは、公式には明記されていませんでした。
補足:これはエンタープライズ向け(Plus+IdP運用)の機能です。SSO(シングルサインオン)基盤を持つ企業が、会員データをShopifyに統一できる位置づけになります。
タグの同期に着目すると、セグメントや会員ランクをIdP側で管理してShopifyに反映する、といった運用ができると感じました。その際は上書きルールの設計が肝になりそうです。対象はPlus+IdP運用と限定的な重要度Bですが、Plusのエンタープライズ提案では刺さる機能に見えます。
#18 より多くのプランでB2B機能が利用可能に これまでPlus限定だったB2B(卸・法人向け販売)が、Basic以上の全プランで使える。 +
これまで B2B(法人向け卸販売)は Shopify Plus 限定でしたが、今回 Basic / Grow / Advanced / Plus で使えるよう拡大されました。出典には英語で “You can use Shopify B2B on the Basic, Grow, Advanced, and Shopify Plus plans.”(=Shopify B2BはBasic・Grow・Advanced・Shopify Plusの各プランで利用できます)とありました。つまり追加費用なしで標準プランでもB2Bを始められるようになった、ということです。オンラインカテゴリで唯一のS級項目で、本カテゴリの主役です。

プラン別の中身を、公式の記載ベースで整理します。
- B2Bカタログ数:Basic / Grow / Advanced は全B2Bマーケット合わせて最大3つのアクティブカタログ。Plus は無制限。
- 全プラン共通:会社(Companies)/会社ロケーション(Company locations)/数量割引(Quantity price breaks)/数量ルール(Quantity rules)。
- Advanced 追加:Shopify Markets 経由の文脈別チェックアウト・ストアフロントカスタマイズ。
- Plus 専用:会社/ロケーションへのカタログ直接割当、デポジット・分割払い・出荷ごとの支払い要求といった高度な支払い。
BtoC(通常のオンラインストア)は「個人が、表示された1つの価格で、その場でカード決済して買う」モデルです。B2Bはこれを法人取引の作法に置き換えます。違いは大きく5点(注文確定を含めると6点)あります。
| 観点 | BtoC(通常) | B2B |
|---|---|---|
| 顧客の単位 | 個人アカウント | 会社(Company)+会社ロケーション。1社に複数バイヤーを紐づけ |
| 権限 | 本人のみ | ロケーション単位で「誰が注文できるか」を権限管理。担当者・承認者を分けられる |
| 価格 | 全員同じ表示価格 | 会社/グループ別の卸価格(価格リスト)。同じ商品でも相手で値段が違う |
| 数量 | 自由 | 数量ルール(最小/最大/刻み)+数量割引(まとめ買いで単価ダウン) |
| 支払い | その場でカード即決済 | 決済条件(Net 7〜90 等)=後払いが選べる。承認フローも挟める |
| 注文確定 | 即確定 | 「自動確定」か「下書きで一旦承認」を選べる(与信・在庫確認のため) |
つまりB2Bは「専用カタログ+決済設定」だけではなく、会社という顧客構造・権限・後払い・承認フローまで含む“卸の仕組み一式”だ、という点を押さえる必要があります。「カタログと決済だけ」と誤解されがちなので、ここを丁寧に図解したいところです。
会社ロケーションの「決済条件を編集」で選べるのは、決済条件なし/フルフィルメント時決済/Net 7・15・30・45・60・90です。ここで重要なのは、「Net 30=30日後に自動でクレカ請求」ではないという点です。
注意:Net terms(後払い)では、注文は未払い(pending)の状態で成立し、Net 30は「注文日から30日以内が支払期限」という期日設定にすぎません。集金は基本的に手動で、顧客側はお客様アカウントで「今すぐ支払う(Pay now)」、マーチャント側は保存カードがあっても管理画面で手動で請求する必要があります。つまり期日に自動課金はされません。この手間を埋めるのが #24「保存された決済方法での自動請求」(Flowで自動化)です。
検証ストアで会社(B2B取引先)を作成し、決済条件=Net 30、チェックアウト設定=登録ロケーション住所への配送/注文を自動で送信、という設定まで確認できました。チェックアウト設定では「会社のバイヤーがチェックアウトしたとき、①登録拠点の住所だけに送るか・1回限りの住所も許すか」「②注文をそのまま自動確定するか・一旦下書きで承認してから確定するか」を選べるようになっており、与信や在庫を確認したい卸取引では『下書きで承認』が安全弁になります。
補足(提案の分岐点):非PlusはB2Bカタログ最大3つという上限があります。取引先ごとに違う価格表を多数持ちたい場合は、ここがPlusへの分岐点になります。カタログを会社に結びつける方法は「マーケット経由(非Plusで有効)」と「会社ロケーションへ直接割当(主にPlus)」の2方式があります。
これはB2Bの民主化だと感じました。中小(Basic〜Advanced)でも卸・法人販売を追加費用なしで始められるので、新規B2B提案の母数が一気に広がります。記事の山場は「BtoCとの違い5点」で、“カタログ+決済だけ”という誤解をほどくのが肝です。実務では「Net=期日設定で集金は手動/Pay now、自動課金は別途Flow(#24)」を最初に押さえておきたいところです。オンライン唯一のS級として、卸・法人販売に踏み出すストアが一気に増えそうな更新だと感じています。
#24 保存された決済方法での自動請求 B2B後払い注文の支払期日に、保管済みカード/口座から自動課金(Flowアクション)。 +
#18で整理したとおり、B2BのNet terms(後払い)は標準では自動課金されず、期日が来てもマーチャントが手動で請求する必要がありました。これを Shopify Flow の新アクションで自動化する機能です。元の説明では、Shopify Flow で B2B 顧客の保存済み決済方法に自動請求する、とされています。

新Flowアクション「Charge vaulted payment for B2B order」は、決済条件(payment terms)付きの注文について、支払期日が来たら顧客の保管済み(vaulted)クレジットカードに課金、または保管済み銀行口座から引き落としを自動実行します。つまり「Net 30の30日後に自動で集金」を、Flowで組めば実現できる、ということです。
仕組みと要件は次のとおりです。
- トリガー:フルフィルメント時/支払期日/請求のいずれかを起点にできます(出典には fulfillment・due date・invoicing が挙げられています)。「期日が来たら課金」だけでなく、出荷時や請求時にも発火させられます。
- 前提①:保管済み決済方法(vaulted credit card/bank account)が必要。顧客のカード/口座をあらかじめ保管(vaulting)しておきます。
- 前提②:決済条件(payment terms)付きのB2B注文であること。
- 前提③:Shopify Flow を使うこと。
注意:提供開始はChangelogによると2026年6月17日です。Plus必須かどうかは公式に明記されていませんが、Flow+B2Bという組み合わせから実質的にはAdvanced〜Plus想定と見られます。前提として顧客のカード/口座のvaulting(保管)が要るため、顧客に保存してもらう導線づくりがセットになります。
補足:#18の「Net=手動が前提」を補完する位置づけです。記事では「標準Net termsは手動課金 → このFlowアクションで自動化」という対の関係で説明すると分かりやすくなります。
Net terms運用で最大の手間だった「期日が来たら手で請求」を自動化できる点で、後払いB2Bの回収を仕組み化できると感じました。未回収や請求漏れを防げるのは、後払いを多用する卸取引の運用品質に直結します。重要度Aとして、#18とセットで語ると効く更新だと見ています。
#25 QuickBooksとMailchimpがB2Bをネイティブにサポート B2B拡大に合わせ、会計・メール配信の主要アプリがB2Bデータに正式対応。 +
B2Bが多くのプランに開放された(#18)のに合わせ、主要な外部アプリ(会計のQuickBooks/メールのMailchimp)がShopifyのB2Bデータをネイティブに扱えるようになりました。元の説明では、B2B注文・PO番号・会社情報を QuickBooks に同期し、Mailchimp で配信する、とされています。つまりB2Bの周辺業務(会計・マーケティング)が、標準的なアプリで回せるようになった、ということです。

QuickBooks(会計)については、次のとおりです。
- B2B注文・PO番号(発注番号)・会社情報を QuickBooks に同期します。卸取引の請求/記帳を会計ソフトへ自動連携でき、サードパーティの自前コネクタを噛まさずに注文から会計までが繋がります。
- PO番号が同期されるため、取引先の発注番号で照合・消込ができます(B2B経理の実務に直結)。
Mailchimp(メールマーケ)については、次のとおりです。
- Shopifyの会社(Company)データが Mailchimp に自動同期され、B2Bセグメントを作成できます。
- 組織内の全コンタクトをセグメント化し、B2B向けにターゲット配信できます。法人顧客向けのメール施策(再注文促進・新商品案内など)をMailchimpで打てる、ということです。
注意:この更新の主役はShopify本体ではなく、外部アプリ側の対応です。記事では「B2B拡大に外部アプリが追従し、会計・マーケまで揃った」という文脈で扱うのが正確です。
補足(日本での読み方):QuickBooksは米国系の会計ソフトで日本の会計実務には馴染みが薄いため、日本向けには「Mailchimpの会社データ→B2Bセグメント配信」のほうが刺さると感じます。会計連携については、日本では freee や MFクラウド等の別アプリ事情があり、QuickBooks連携とは別の話、と補足しておくのが親切です。
B2Bの「売る前後」(会計・マーケ)が標準エコシステムで完結するので、B2Bを始める障壁がさらに下がったと感じました。#18のB2Bプラン拡大と一体で語ると効きます。会計面ではPO番号・会社情報の同期が卸の経理(請求書照合・消込)を自動化する実務価値を持ち、マーケ面では会社データからB2Bセグメントが自動生成され法人向けメール施策をすぐ打てます。重要度Aですが、繰り返すとおり主役は外部アプリ側なので、その点を踏まえて紹介したい更新です。
Shopify Collective とは:Shopify ストア同士で仕入れ(リテーラー)と卸(サプライヤー)をつなぐ仕組み。他店の商品を自店で販売(ドロップシッピング)したり、自店の商品を他店に卸したりできます。日本でも稼働しており、日本ブランドの参加も多数あります(サプライヤー側の利用を実機で確認済み)。以下5項目はこのCollectiveの強化です。
#20 Collectiveの内税(税込)価格設定 税込の卸取引で、埋め込まれた税を自動分離しリテーラーのマージンを守る。 +
元の一文では「内税価格でもB2B取引の税金を自動計算し、利益率を保護」とされています。これは Shopify Collective(Shopify同士のドロップシッピング市場)で、サプライヤーから商品を仕入れて売るリテーラー側の話です。公式の説明では、税込価格で卸取引をするとリテーラーのマージンが見えにくくなり目減りするという問題を、埋め込まれた税額を自動で分離して別管理することで解決する、とされています。

具体的には、サプライヤーが税込価格で卸す(例:£120=VAT(Value Added Tax/付加価値税)20%込)と、リテーラーが「30%マージンのつもり」で素朴に計算しても、税が価格の中に埋まっているため利益が曖昧になります。Collectiveはこの埋め込み税を自動で抜き出して、リテーラーの実質コストと税を切り分けます。
出典には、埋め込み税を抽出する式として 商品原価 ×[1 − 1÷(1 + B2B税率)] が書かれていました。先の例(£120・20%込)だと、埋め込みVAT £20 が分離される計算です(120−120÷1.2=20)。分離された税は、管轄によっては税務当局から仕入税額控除(credit/クレジット)として還付請求でき、DtoC(Direct to Consumer/消費者直販)で顧客から預かった税と相殺されることで、意図した30%マージン(例:£30の利益)が保たれると説明されています。
- 対象地域:「Collectiveが使える全ての国(ジブラルタル・香港を除く)」とされています。
- UK/EUのリテーラーは税登録ステータスの確認が必要。
- 設定場所:リテーラー側の
設定 → 税金と関税 → 商品価格に売上税を含めるで内税価格を構成。
注意:分離した税が実際に還付されるかどうかは管轄(国・地域)次第です。「自動計算でマージンが見える化される」ことと「税が必ず還付される」ことは別物なので、ここは正確に切り分けて理解しておくのが安全です。
補足:Collectiveでリテーラーをやる際に「儲けが読める」前提を作る、地味ですが効く機能です。内税運用が一般的な日本でこそ意味が大きく、日本も対象地域に含まれます。
派手さはありませんが、税込表示が当たり前の日本のEC事業者にとっては地に足のついた改善だと感じました。卸価格に税が埋まったまま仕入れ判断をすると、気づかないうちにマージンが削られます。「税を分離して原価と利益を可視化する」という発想は、Collectiveで本気でリテーラーをやるなら無視できない土台だと見えます。
#23 オーストラリアでCollectiveが利用可能に 地域限定(豪州) Collective対応国に豪州が追加。対応エリアが順次拡大中。 +
元の一文では「豪州のビジネスがサプライヤー・小売業者を管理可能に」とされています。出典の内容では、Shopify Collective の対応国にオーストラリア(豪州)が追加され、豪州のストアがサプライヤー(卸す側)/リテーラー(仕入れて売る側)の両役割を使えるようになった、と説明されています。

これ自体は地域限定のニュースで、日本のマーチャントへの直接の影響は小さいです。ただ重要なのは、これが Collectiveが順次対応国を拡大しているという流れの一例である点です。
補足:Collectiveはかつて英米中心という印象がありましたが、日本は既に対応済み(検証ストアでサプライヤー側が稼働し、日本ブランドも多数参加しているのを確認しました)で、そこへ豪州が加わった格好です。「英米中心から対応国を広げている」という文脈材料として捉えるのが妥当だと感じます。
日本向けに大きく構える話ではありませんが、対応国が一つずつ増えているという事実は前向きに受け取れます。越境や海外展開を視野に入れる事業者にとっては、Collectiveが「自国だけのもの」ではなくなりつつあるサインに見えました。
#19 Collectiveの商品調達インサイト 「何を仕入れるべきか」を、検索ゼロ件・トレンド・売上節目から可視化。 +
元の一文では「検索ゼロ件キーワードやトレンドを可視化し、データに基づく仕入れ判断」とされています。前提として Shopify Collective はShopify同士のドロップシッピング(在庫を持たない販売)市場で、自社商品を他店に卸すサプライヤー(在庫・出荷を担当)と、サプライヤー商品を在庫リスクなしで自店に取り込んで売るリテーラー(小売)に分かれます。1社が両方を兼ねてもよく、全Shopifyプランで無料(ストア審査あり・最低売上要件なし)とされています。

本項目はリテーラー向けの「何を仕入れるべきか」インサイトで、公式の説明では3種のカードで提示されます。
- 検索ギャップ(Customer Search Gaps):自店で検索されたのに結果がゼロだった商品タイプを可視化。「欲しがられているのに置いていない」需要を表し、Collectiveから仕入れて穴埋めできます。
- トレンド/関連商品:すでに人気の商品タイプに対し、類似・補完商品を追加する機会を提示。
- パフォーマンスの節目:売上マイルストーンや閲覧数で「何が刺さっているか」を表示。
公式には「自店の顧客需要を完全に満たすCollective商品カタログを作る」ための機能、と書かれていました。場所はリテーラー側専用で、管理画面の Collective(リテーラー)→ Insights タブ に表示されます。
注意:今回の検証ストアでは販売チャネルに「Collective: Supplier(サプライヤー側)」のみを導入しており、リテーラー側が未設定のため、このInsightsタブ自体は確認できませんでした。見るにはApp Storeから「Shopify Collective」を導入してリテーラーとしてセットアップし、サプライヤーと接続して商品を取り込む必要があります。さらにインサイトのカードは自店の検索・売上データが溜まってから表示されるため、導入直後は空の可能性が高いです。
補足:かつて「Collectiveは米国中心で日本には効きにくい」と見ていましたが、これは誤りでした。検証ストア(日本・東京)でサプライヤー側が稼働しており、ディスカバリ画面には日本ブランドが多数参加しているのを確認しています。豪州が新規追加されるなど対応国を順次拡大している段階で、日本でも十分に使える機能です。
「売れるはずなのに置いていない」を、自店の実検索データ(検索ゼロ件)から発見できるのは強いと感じました。在庫リスクなしで品揃えの穴を埋められるため、仕入れの勘をデータで補正できます。今回は実機でInsightsタブまで踏み込めませんでしたが、リテーラーとしてデータが溜まれば真価を発揮するタイプの機能に見えます。
#21 Collectiveでの商品検索が向上 仕入れ候補を探すディスカバリに、カテゴリーピル・絞り込みが追加。 +
元の一文では「カテゴリーピルや絞り込み強化で商品を素早く追加」とされています。これはリテーラーがサプライヤー商品を探すディスカバリ画面の改善で、公式の説明では カテゴリーピル(電化製品&光学機器/ファッション&アパレル/ホーム&リビング 等)や絞り込み強化が入り、取り込む商品を素早く見つけられるようになった、とされています。あわせて公式には、取引(決済)の設定前でも商品をインポートできる機能が追加されたとも記されており、サプライヤーと条件を詰める前に候補を取り込んで品揃えを検討できるようになっています。

検証ストアのサプライヤー側ディスカバリでも、カテゴリ別の表示+検索+レビュー★が出ているのを確認しました。カテゴリと評価で絞り込める作りになっており、日本ブランドが評価付きで並んでいました。
補足:体験改善寄りの項目(重要度は中程度)です。仕入れ候補の探索効率が上がる地味な改善ですが、扱える商品が増えるほど「探しやすさ」が効いてきます。
マーケットプレイスは品揃えが増えるほど「探せないと意味がない」状態に陥りがちなので、カテゴリと絞り込みの強化は順当な進化だと感じました。検証ストアで日本ブランドにレビュー★が付いて並んでいるのを見て、Collectiveが日本でも実際に動いているのを実感できた項目でもあります。
#22 配送実績と信頼バッジ サプライヤーの配送実績を指標化。良い実績はバッジとなり発見されやすく。 +
元の一文では「サプライヤーが配送実績を確認し、追跡認証バッジで見つけやすさ向上」とされています。これはサプライヤー側の機能で、公式の説明では、配送業者確認済みの荷物・期日通りのフルフィルメント・期日通りの配達などの配送実績が指標化され、良い実績は信頼バッジとなってリテーラーからの見つけやすさ(ディスカバリ順位)に影響する、とされています。

検証ストアでも、サプライヤーのホームに「配送パフォーマンス」が表示されているのを確認しました。観察した時点では、配送業者確認済みの荷物・期日通りのフルフィルメント・期日通りの配達がいずれも0%という、まだ実績が積まれていない(出荷データがない)段階の表示でした。
補足:体験改善寄りの項目(重要度は中程度)ですが、サプライヤーにとっては見逃せない設計です。出荷品質がそのまま集客(リテーラー獲得)に直結するため、卸で稼ぐなら配送実績を上げる明確な動機になります。
「配送がちゃんとしているサプライヤーほど見つけてもらえる」という設計は理にかなっていると感じました。リテーラーは自分が出荷しない以上、サプライヤーの配送品質に売上を預けることになるので、その指標が可視化されてディスカバリ順位に反映されるのは双方にとって健全です。卸を本気でやるなら、配送実績を「集客KPI」として意識する価値がありそうに見えます。
25項目を通して見えるのは、2つの大きな流れです。1つは AIがストアの中に染み込むこと——接客(#01)、分析(#03)、検索(#02)、価格(#16)まで、判断をAIが下支えします。もう1つは 「売る相手・売る場所」の壁を下げること——A/Bテスト(#04)で勘を排し、マーケット機能(#05〜#12)で地域・チャネルごとに最適化し、B2B(#18)を全プランに開放して法人取引の間口を広げ、Collective(#19〜#23)でストア同士の仕入れ・卸をつなぎます。
実務的な読み方(個人的な見解)
まず注目すべきは #18 B2Bの全プラン開放。これまで「Plusじゃないと卸ができない」が崩れ、中小ストアでも法人取引を始められます。ただし 後払い(Net terms)は自動集金されないという設計上の注意があり、#24(自動請求)とセットで設計するのが定石です。次に #04 A/Bテスト(Rollouts)——“なんとなくの改善”を“測れる改善”に変える基盤。そして #01 AI販売スタッフ/#13 お客様アカウント刷新は、Shopサインインを土台にした「これからの接客・会員体験」の入口で、相互に地続きです。多くの項目にプラン条件・地域条件・段階展開が付くため、「今すぐ・自店で使えるか」を一つずつ確認することをおすすめします。